たかが残業手当と甘く見ていませんか


 バブル景気が終わり不景気が続いている中、どこの企業も経費の節減に頭を痛めていると思います。思いつきやすいのが新聞・テレビで取り上げられている、いわゆる「サービス残業」です。厚生労働大臣の記者発表でサービス残業を「不払い時間外労働」と位置づけ、対策を講じるとしています。

 時間外手当が支払われないため、労働者が行う行為は@労働基準監督署への申告(行政指導を求める) 、A裁判による強制執行、B労働基準監督署へ労働基準法違反による刑事告訴の3通りがあります。ご存知の通り、労働基準法は刑事罰もある取締法規です。時間外手当を支払わない場合、労働基準法第37条違反で「6ヶ月以下の懲役又は30万年以下の罰金」と定められています。

 また、「給料の中に、ある程度の残業代も含めているよ」と答えられる社長さんもいらっしゃいますが、自信を持って根拠を答えられますか。きちんとした答弁ができなければ、残業代が含まれているとはみなされません。

 さて、御社は時間外手当の対策を講じていますか。ページをめくりますと、対策を講じておかないための実例を紹介します。


 実例1 労働基準監督署への申告(行政指導)

 一番多いのが、従業員が所轄労働基準監督署に相談に行き、法令違反として指導を求めるケースです。この場合、違反の事実が見つかると労働基準監督官(以下監督官)が是正勧告書を交付して、事業所は是正したことを報告します。是正勧告書には法的拘束力はありませんが、賃金に関することなど労働基準法上重大な違反を繰り返し場合や、人数が多い場合などは監督官の判断で刑事事件として立件するケースがあります。

 最近では、青梅労働基準監督署が時間外手当を支払わないため、数度に及ぶ是正指導に応じずタイムカードの改ざんなど悪質と判断された事業主を逮捕したケースがあります。

  実例2 裁判所の強制執行

 訴訟額が、60万円未満だと簡易裁判所で少額訴訟を行うことができるため、訴訟を起こすケースが増えています。労働者側が勝訴しても、事業主側が履行しないと、労働者側は裁判所に対して強制執行を申し立てすることができます。

 裁判が行われると会社側のデメリットとしては、@公開の原則があるため被告として会社名が公になること、A出廷義務があるので欠席裁判になると訴えられた内容で判決が確定してしまう、そのため無駄な時間を費やさなくてはならなくなる、B時間外手当不払いの場合、原告の訴えにより未払い額と同額の付加金の請求が可能なため会社は、2倍の額を支払わなければならなくなる、C債権の差し押さえを行う際、取引先の売掛金や金融機関の口座を差し押さえるケースが多いので信用低下につながることがあげられます。

 実例3 労働基準監督署へ刑事告訴

 一般的ではないですが、刑事告訴を行う従業員はいます。傾向として、@年配の従業員、A正義感が強くリーダーシップのあるタイプ又は資産があり経済的に余裕のある従業員、B訴える会社が大手企業又は株式公開を考えている企業の従業員、が挙げられます。

 従業員が証拠や証人などがあって刑事告訴されると厄介なのが、会社が知らないうちに金融機関や取引先に照会されたり強制調査が行われます。強制調査は裁判所の礼状により行われるので、調査の妨害や書類等を目の前で処分したりすると公務執行妨害等の現行犯になります。

 最近のケースでは大手消費者金融が残業時間の上限を定め、支払われていないことが確認されたため全従業員に合計数億円支払っています。

 対処方法は

 もともと労働基準法は、労働者保護のために作られた法律なので事業主に対して厳しいものがあります。また、昭和22年に作られた法律のため現状にそぐわないところがあるのは事実ですが、法的にクリアしていれば恐れることはありません。手間がかかり面倒な部分はありますが、事業主さんが法律遵守の考えをお持ちであれば対処できます。

 細かい対処方法は、ホームページ上では公開できません。相談ご希望の方はご連絡下さい。一度お会いしてお話させていただきます。対策方法につきましては、相談内容がデリケートな部分があるため電話等でのお答えはいたしかねます。ご了承下さい。