外国人の雇用
これからの日本は、就業人口の高齢化、少子化による若年労働者の不足、産業の国際化などにより、外国人労働者を活用して日本の産業・経済を活発化させていく必要があり、避けて通ることができなくなってきます。その一方で不法就労などが問題化され、治安の悪化や外国人労働者の酷使など、そのひずみを生じさせています。事業主側も、不法就労や雇用契約など知らなかったでは済まされなくなっています。
外国人は「出入国管理及び難民認定法」(以下「入管法」という)で定められている在留資格の範囲内において、日本国内での活動が認められています。現在、在留資格は27種類あります。このうち、短期滞在(いわゆる観光ビザ)及び研修の在留資格は就労することはできません。
@在留資格が認められた範囲で就労が認められる在留資格 16種類
在留資格 | 例 | 在留期間 |
外交 | 外国政府の大使・公使・総領事等及びその家族 | 「外交活動」を行う期間 |
公用 | 外国政府の大使館等の職員及びその家族等 | 「公用活動」を行う期間 |
教授 | 大学教授等 | 3年又は1年 |
芸術 | 作曲家・画家・著述業等 | 3年又は1年 |
宗教 | 外国宗教団体から派遣される宣教師等 | 3年又は1年 |
報道 | 外国の報道機関の記者・カメラマン等 | 3年又は1年 |
投資・経営 | 外資系企業等の経営者・管理者 | 3年又は1年 |
法律・会計業務 | 弁護士・公認会計士等の士業 | 3年又は1年 |
医療 | 医師・歯科医師等 | 3年又は1年 |
研究 | 政府関係機関や企業等の研究(「教授」の項に掲げる活動を除く) | 3年又は1年 |
教育 | 高等学校・中学校等の語学教師等 | 3年又は1年 |
技術 | システムエンジニア・設計技術等(「教授」の項、「投資・経営」の項、「医療」の項から「教育」の項まで、「企業内転勤」の項及び「興業」の項に掲げる活動を除く) | 3年又は1年 |
人文知識・国際業務 | 通訳・企業の語学教師・デザイナー・為替ディーラー等(「教授」の項、「芸術」の項、「報道」の項並びに「投資・経営」の項から「教育」の項まで、「企業内転勤」の項及び「興業」の項に掲げる活動を除く) | 3年又は1年 |
企業内転勤 | 外国事業者からの転勤者 | 3年又は1年 |
興行 | 俳優・歌手・ダンサー・プロスポーツ選手等(「投資・経営」の項に掲げる活動を除く) | 1年、6月、3月又は15日 |
技能 | 外国料理のコック・スポーツ指導者・貴金属等の加工職人・航空機等の操縦者 | 3年又は1年 |
・在留資格内の就労のみ可能です。資格外の就労を行う場合は、資格外活動の許可証が必要です。
・講演や講義、助言、鑑定など業として行うものでないもの、知人・友人等の依頼を受けて日常の家事に従事すること(業として従事するものを除く)は、謝金、賞金、報酬があっても入管法施行規則により活動が認められています。
A原則として就労が認められない在留資格 6種類
在留資格 | 区分 | 在留期間 | 労働時間 | 夏休み等の長期休暇 |
留学 | 大学生・大学院生 | 2年3月、2年、1年3月又は1年 | 週28時間以内 | 1日8時間以内 |
聴講生・科目履修生 | 2年3月、2年、1年3月又は1年 | 週14時間以内 | 1日8時間以内 | |
専修学校・専門学校生 | 2年3月、2年、1年3月又は1年 | 週28時間以内 | 特例なし | |
就学 | 日本語学校等 | 1年3月、1年又は6月 | 1日4時間 | 特例なし |
文化活動 | 1年又は6月 | |||
短期滞在 | 90日、30日又は15日 | 行政運用上許可しない | ||
研修 | 1年又は6月 | 行政運用上許可しない | ||
家族滞在 | 3年、2年、1年、6月又は3月 |
・地方入国管理局(支局・出張所を含む)で資格外活動の許可を受ける必要があります。すでに所持している場合は、旅券(パスポート)又は外国人登録証で確認することができます。
・「留学」、「就学」の在留資格をもって在留する場合は、上記の時間まで就労が包括的に許可されます。
・「留学」、「就学」以外の在留資格をもって在留する場合は、単純労働的業務に就労することはできません。
・風俗営業等が営まれている事業所においては就労できません。
・「研修」、「短期滞在」の在留資格を持つ者には行政の運用上、原則として資格外活動の許可を与えないものとされています。
B就労活動に制限がない在留資格 4種類
在留資格 | 例 |
永住者 | 法務大臣から永住の許可を受けた者 |
日本人の配偶者 | 日本人の配偶者・実子・養子 |
永住者の配偶者 | 永住者・特別永住者の配偶者及び日本で生まれ、引き続き在留している実子 |
定住者 | インドシナ難民・日系2・3世・外国人配偶者の連れ子等 |
・就労活動に制限がないので、日本国内の法律に違反していなければ問題ありません。ただし、定住者については在留期限を超えてしまいますと不法滞在となり、就労はできません。
C許可内容により就労の可否が決まる在留資格
在留資格 | 例 | 在留期間 |
特定活動 | 法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動で、ワーキングホリデー、 技能実習等、許可内容によって就労が認められる | @5年、4年、3年、2年、1年又は6月 |
A1年を超えない範囲内で法務大臣が個々の外国人について指定する期間 |
●雇用する際は、ここに注意してください
在留資格や在留期間は、外国人登録証明書(クレジットカード大の大きさ)又はパスポートの上陸許可証印、就労 資格証明書等で確認できます。また、資格外活動の許可を得ているか否かについては、資格外活動許可証により確認することができます。雇用する際は、必ず外国人登録証明書又はパスポートで確認しコピーを取っておいてください。ただし、これらの書類の原本を預かることは避けてください。パスポートや外国人登録証明書は、常に所持する義務があり、場合によっては不当に拘束する形に見られ強制労働(労働基準法第5条)とみなされてしまう恐れがあります。無用なトラブルを防ぐため注意が必要です。
平成2年の入管法改正により就労資格のない外国人を雇用すると、3年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処せられます(入管法第73条の2)。また、同条第3項に行為者を罰するほか、その法人または人に対しても同様に処罰する規定(両罰規定)が設けられています。
●法律関係の適用は?
労働基準法・労働組合法・労働安全衛生法等
日本の労働者と同様の取り扱いをしますので、国籍を理由に賃金その他労働条件に差別することはできません。外国人労働者が多数いる事業所では、就業規則を日本語と母国語を対照で記載することが必要になります。また、雇入通知書や労働契約書等も同様な配慮が必要です。不法就労の労働者のケースでも労働基準監督署は是正指導は行います。
労働者災害補償保険法
外国人であっても適用されます。旧労働省の通達で、「オーバーステイの状態であっても、資格外労働として仕事をし、怪我をした場合何らその受給権には影響しない」(昭和63年1月26日基発第50号)とされています。
研修生として受け入れられている場合は、その外国人の方は労働者に該当しませんので原則として労災の適用はありません。研修生を受け入れる場合は、民間の傷害保険に加入する必要があります。
雇用保険法
原則として、日本に在留資格がない場合は雇用保険の被保険者になりませんが、平成19年10月1日より雇用対策法が改正されることになり被保険者に該当するかどうかの有無にかかわらず届け出が必要になります。届け出の際、在留資格や国籍、在留期限等の記載が追加されるので外国人登録証やビザの確認が重要になります。なお、雇用保険の被保険者に該当する外国人労働者は@永住者、A日本人の配偶者等、B永住者の配偶者等、C特別永住者、D定住者に関しては、日本国内での就労に関しては問題ないので適用除外に該当しない限り、被保険者になります。加入義務がある者を加入させなかった場合は、日本人と同様に事業主が賠償責任を負う事があります。
健康保険法(国民健康保険法)・介護保険法
加入要件は日本人・外国人の区別はありません。また、健康保険の被保険者に該当しなければ個人で国民健康保険の加入手続きをしなければなりません。介護保険も第2号被保険者に該当する場合は適用になりますが、在留資格又は在留見込期間が1年未満の外国人等は適用除外になり、健康保険に加入しても介護保険料徴収の対象になりません。
厚生年金保険法(国民年金法)
健康保険法と同様に加入要件は日本人・外国人の区別がありません。従って、将来本国に帰国し老齢厚生年金の被保険者期間を満たすことなくとも加入することになります。障害や死亡のときの保険給付は外国人でも適用されますし、帰国した際に脱退一時金の制度がありますので全くの掛け捨てではありません。なお、日本とドイツ・イギリス・韓国・アメリカ・ベルギー・フランス・カナダ・オーストラリア・オランダ・チェコ・スペイン・アイルランド・ブラジル・スイス(イタリアは条約発効準備中 2012年3月現在)との間に年金に関する協定が結ばれており、加入の取り扱いが国籍や身分によって異なることがありますので、日本年金機構又は年金事務所(旧社会保険事務所)にお問い合わせください。
実務上の注意
・日本人を雇用するときと同様に労働条件の明示・労働契約の締結が必要になりますが、言葉の壁や生活習慣の違いなどによって思わぬトラブルになることがあります。残業(残業することは、その労働者の能力が低いと考えられています)、税金・社会保険料の控除(自分自身で納付する国が多いようです)に関しては、特に説明が必要です。
・契約を重視しますので、相手方が理解できるよう日本語と母国語対照の労働契約書(労働条件通知書)を交付することをお勧めします。サンプルをおいている労働基準監督署や都道府県の労働センターもあります。
・外国人登録は日本に入国して90日以内に登録する義務があります。住所又は居所の市区町村で登録を行っています。就労証明書は、地方入国管理局で行います。