解雇されたら
●会社を辞める形は
仕事をやめる形にはいくつかあります。 @退職 退職とは、労働者の意思又は契約期間の終了、定年などで会社を辞めることをいいます。労働者の意思によって辞 める場合は、退職届(会社によって用紙は任意、規定の場合があります)を退職予定日の2週間から1ヶ月前に提出 して辞める意思を会社に伝えます。提出時期は、就業規則で定められていたらその日までに、定めがない場合は民法 の規定により2週間前までに提出します。 期間の定めのある労働契約の場合は、雇入れ時に明示された労働条件と事実が違う場合や、やむをえない事情があ る場合を除き、原則として使用者の同意がなければ期間の終了までは退職できません。使用者が同意すれば問題あり ませんが、労働者からの一方的な労働契約の解除によって会社に損害を与えた場合は、損害賠償請求されることがあ りますので注意してください。その場合、会社側は明確な損害額を提示しなくてはなりません。 A退職勧奨 退職勧奨とは、使用者側が労働者に対して退職を勧め、労働者がそれに応じることをいいます。退職勧奨の場合は、 早期退職優遇制度により退職金の割り増しなどを行うことが多いようですが、必ずしも優遇されるわけではありませ んので、どのような条件(年齢、職種など)をよく確認する必要があります。 B雇止め 期間を定めた労働契約を繰り返し更新し、ある時点で使用者が更新を拒絶をした場合をいいます。パートタイマー やアルバイトが短期の雇用契約を結ぶことが多いですが、雇止めをした場合、それが解雇なのか退職なのか、雇止め が認められるか否かの明確な基準はないのでトラブルになることがあります。 C解雇 解雇とは、使用者の意思で労働契約を一方的に終了させることをいいます。雇用期間が定められている契約や定年 は解雇ではなく契約期間満了による退職になります。解雇には、懲戒解雇、整理解雇、普通解雇に分けられます。
●懲戒解雇
懲戒解雇とは、労働者の責めに帰すべき事由(企業秩序違反等があるとき)による解雇です。その中でも会社に対 して重大な不利益を与えたときに懲罰の意味を込めて行われるもので、会社の金銭の横領、故意に会社の信用を落と す行為をしたとき、重い刑事罰を受ける行為をしたときなどがあげられます。 この場合、解雇予告も予告手当の支払いもなく、直ちに解雇される場合がありますし、退職金の全部又は一部が支 払われないことも少なくありません。
●整理解雇
整理解雇とは、経営困難、企業規模の縮小など使用者の都合で人員整理がされたり、倒産に伴って解雇されるケー スです。解雇予告制度も適用されます。
●普通解雇
労働者に不都合な行為、業務上の不適格などがあるときや不可抗力による事情などにより、雇用関係の継続が困難 になった場合になされる解雇です。使用者は、労働基準法第20条及び第21条の解雇予告制度(解雇予告期間、解雇予 告手当)を守らなければなりません。
●解雇・雇止めのできる場合ですか
@法令違反はありませんか(懲戒・整理・普通・雇止め) 「法律で禁止されている解雇」に当たらないかチェックしてください。 A合理的な理由はありますか(懲戒・普通) 懲戒解雇の場合は、就業規則で定めた懲戒解雇理由に当てはまるかどうかが特に重要です。普通解雇でも、就業規 則の定めのほか、雇用関係を打ち切るだけの相当な理由が必要です。 B整理解雇の4要件を満たしていますか(整理) 整理解雇の4要件が必要で、この場合特に経営状態がどうなっているか、手続はどうかなどをできるだけ調査して ください。 C実質的な解雇ではありませんか(雇止め) これまでの更新状況などから、契約期間の定めが形式的なものになっているような場合、雇止めにも解雇の場合に 準じた合理的理由が必要です。また、更新に関する契約条項がどう決められているかもチェックしてください。
次のような解雇は、法律上禁止されて無効です。 @ 業務上の傷病(通勤災害は含まれない)による休業期間及びその後30日間の解雇(労働基準法第19条) A 産前産後の女性が労働基準法第65条によって休業する期間及びその後30日間の解雇(労働基準法第19条) B 国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇(労働基準法第3条) C 労働者が労働基準監督署へ申告したり機会均等室へ紛争解決の援助を求めたことを理由とする解雇 (労働基準法第104条、男女雇用機会均等法第12条第2項) D 労働組合の組合員である、労働組合に加入した、結成しようとした、労働組合の正当な行為をしたことを理由と する解雇(労働組合法第7条) E 女性であること、女性が婚姻、妊娠、出産したことを理由とする解雇(男女雇用機会均等法第8条) F 育児・介護休業の申し出をしたこと、又は育児・介護休業をしたことを理由とする解雇 (育児・介護休業第10条・第16条) G 派遣労働者が厚生労働大臣に申告したことを理由とする解雇(労働者派遣法第49条の3)
●解雇には合理的な理由が必要すべての解雇には、社会常識から見て納得できる合理的理由が必要です。それがなければ、たとえ労働基準法に違 反していなくても「解雇権の濫用」として法的に無効とされます。 合理的理由があるか、解雇権の濫用ではないかを判断するに当たっては、就業規則の解雇に関する定めとその合理 性、労働者側の責任事由の有無・程度、解雇にいたるまでの使用者の態度、業務上の必要性、他の判例の事情を総合 的に判断することになります。 次の考え方は誤りです ・上記@〜Fに違反していなければ、自由に解雇できる。 ・労働基準法第20条の解雇予告をしたり、解雇予告手当を支払えば自由に解雇できる。(労基法20条違反には該当し ませんが、不当解雇として裁判で争われたら使用者側が敗訴する可能性が大きくなります。) 懲戒解雇や普通解雇の場合でも、合理的な理由は必要ですが、特に整理解雇は経営上の都合から安易に行われたも のでないか争われることが多く、判例上、次の4つの条件をすべて満たしたときだけ、「合理的な理由がある」とさ れています。(整理解雇の4要件) 条件1 人員削減の十分な必要性がある 人員削減が不況、経営危機など経営上の十分な必要性に基づいている場合です。必要性の程度は、営業状態、資産 状況、人件費の動向、人員配置などから判断されます。解雇した後、パートやアルバイトなどを採用している場合は 解雇の必要性があるとは言えないでしょう。 条件2 解雇回避努力義務を尽くした 解雇を避けるためにとりうる手段を十分尽くした場合です。回避手段には、労働時間の短縮、配転、出向、一時帰 休、新規採用の停止、希望退職募集などの手段があります。希望退職募集をせずにいきなり指名解雇した場合は、義 務を尽くしていないと判断されます。 条件3 解雇対象者の選び方が公正・妥当だ 解雇対象者を客観的、合理的な基準に基づき公正に選定した場合です。その場合の基準としては、勤務成績などの 労働力評価、勤続年数などの企業貢献度、家計への打撃などの労働者の生活への配慮等があげられます。 よく問題になるのが、高年齢者を優先して解雇する場合ですが、製造業などでは長期間勤めて培った熟練した技を 持っている場合があります。そういった者も解雇すると業績回復の上でマイナスに作用することがあります。また、 パートやアルバイトの場合は、どちらかというと家計の補助という場合が多いので優先して解雇対象者になりますが、 中には家計を一人で支えている場合もありますので、公正な判断が必要です。 条件4 説明・協議手続を尽くした 労働組合又は労働者に対して、整理解雇の必要性と人員削減の内容(時期・規模・方法)について十分説明し、誠 意を持って協議した場合です。労働協約で労働組合との協議を義務付けていなくても、説明や協議は必要です。