トラブルを解決するためには
 @未払い賃金・退職金はありませんか
   賃金は、既往の労働に対して支払われるものなので解雇や退職しても権利を奪われることはありません。支払わな
  ければ、会社に対して請求を行ってください。退職金も同様ですが、退職金を支払うことは会社の自由なので就業規
  則等で、自分自身は支払われる対象者なのか確認してください。支払われる根拠がある場合は賃金と同様に扱われま
  すが、任意で支払われている場合などは請求は難しくなります。

 請求の手順
  ・必ず文書にて請求すること
  ⇒請求する権利があるのは本人だけです。あなた自身が何もしないで他の人や役所が代わりに取り立ててくれること
   はありません。まずは、自分自身で請求してください。ただし、電話や直接口頭で伝えても、請求したかどうかの
   記録が残りませんので、文書で請求してください。書式や送付方法は自由ですが、内容証明郵便で出すときは所定
   の方法で文書を作成する必要があります。また、場合によっては配達証明郵便の方が有効な場合があります。文書
   には最低次のことを記入してください。
   
   @未払いの賃金を請求している内容
   A差出日
   B必要によっては、支払方法(銀行振り込みの場合は銀行名と口座番号)

   文書は必ずコピーして下さい。これで支払ってもらえれば問題はありませんが、1週間くらいたっても相手から返
   事がない場合や、支払を拒否した場合は労働基準監督署か裁判所に依頼します。

   労働基準監督署
  ⇒労働基準監督署は、賃金を支払わない場合労働基準法第24条違反として、会社に対し行政指導を命じることができ
   ます。たいていの場合は、監督署に調査されるのを嫌がるため支払われることが多いようですが、中には賃金を支
   払うにも資産がなかったりする場合があります。なお、監督署の行政指導は強制力はありませんので、強制執行や
   差し押さえはできませんが、悪質な場合は申告者の告訴により労働基準法違反で刑事事件として取り扱うことがあ
   ります。窓口になる監督署は、実際に勤めていた事業場がある場所の労働基準監督署になります(管理業務が本社
   の場合も同様です)。転居などで所轄監督署に行けない場合は、お近くの監督署でご相談ください。申告を依頼し
   ても費用はかかりません。
  
  ・相談の際に必要なもの
   @請求した文書のコピー(請求した事実を確認します)
   A給与明細(賃金額を推定します)
   B勤務したことがわかるもの 例:出勤簿・タイムカード、業務日報・運転日報などのコピー
    (実際に勤務していたかの判断に使います。手元にない場合は、自分で表にしても構いませんので、労働時間・
    勤務場所など具体的にまとめてください。)

   裁判所
  ⇒未払い賃金の額が多かったり、請求が困難な場合は裁判を行うほうが解決の近道の場合もあります。費用は掛かり
   ますが、判決には強制力があります。

   未払い額によって裁判所が異なるので注意して下さい。監督署のときと同様、事業所の所在地の裁判所になります

   ・請求額が60万円未満のとき…所轄簡易裁判所(少額訴訟が可能です)
   ・請求額が140万円未満のとき…所轄簡易裁判所
   ・請求額が140万円以上のとき…所轄地方裁判所

  裁判費用等については、裁判所又は弁護士にお尋ねください。


 A解雇予告手当が未払いのとき
   
   未払い賃金の請求と同様に、相手方に文書請求を行ってください。支払われない場合は、監督署又は裁判所で手続
   を行いますが、次の場合は裁判を行った方が解決の近道と思われます。

   ・解雇か自己都合を争っているとき(地方裁判所での裁判になります)
   ・会社が倒産しそうなとき(現実問題として、支払が認められても取れるかどうかは別問題です)
   ・解雇予告手当以外に慰謝料請求や貸付金などがある場合


 B解雇は無効で身分の確認を求める場合
   解雇を争うのなら、受領したままになっていると解雇を認めたと受け取られる恐れがあります。解雇後の賃金に充
  当する通知をしたり、受取を留保する(受取拒否、返還、供託、一時預り通知等)必要があります。元の職場に復帰を
  求めての裁判ですので、いつでも復帰できるような状態でいなければならず、他社への就職はできません。民法の不
  法行為を争うものになるため弁護士に依頼しなければ裁判を行うのは難しいでしょう。裁判費用と判決が出るまで長
  期間になりますので、生活のことを考えなければなりません。
 


   労働問題の相談窓口
   
  @労働基準監督署
   労働基準法・労働安全衛生法違反を監督・是正する権限を持っており、申告して是正を求めることができます。解雇
  や労働条件をめぐってトラブルが起きている場合には、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」により、助言・
  指導、あっせんの制度を利用できます。これは、当事者同士が自主的に解決できるよう、都道府県労働局長が労働問題
  の専門家の意見を参考に助言や指導を行い、双方又は一方から申請があれば紛争調整委員会によるあっせんを行います。
   なお、離職票の記載事項が実際と異なる場合は、公共職業安定所(ハローワーク)へご相談ください。

  A労働センター・労政事務所など(場所によって名称が異なりますが都道府県が運営しています)
   労働問題全般について、電話や面接で担当者が相談に応じています。ケースに応じて使用者とのトラブルを解決する
  ためあっせんをすることもあります。外国語による労働相談を行っている所もあります。

  B労働組合
   解雇問題の場合、労働組合による団体交渉等が有効な場合が少なくありません。職場に組合がなくても、地域労組な
  ど1人でも加入できる組合もありますし、解雇をきっかけに職場に新たに組合を結成する場合もあります。労働組合は、
  2人以上が集まって規約や役員を決め、自由に結成することができます。また、組合員以外の労働相談を行っている組
  合もあります。

  C弁護士
   費用は掛かりますが、法律の専門的知識・経験から、労働問題全般について相談したり、訴訟手続以前に代理人とし
  て交渉してもらったりすることができます。解雇問題も弁護士を通じた交渉で解決に至ることもあります。  

  D社会保険労務士会
   東京神奈川京都など各地の社労士会で労務相談を行っています。社労士の私自身が言うのも恥ずかし
  い限りですが、人事・労務の専門家が社会保険労務士ですので解決に向けてのアドバイスを受けることができます。