労働契約書は必要か

 パートで時給900円で募集していた会社に採用され働き始めたのですが、給料は時給850円で計算されていました。そのことを会社に聞いたら、試用期間だからということで850円しか支払われませんでした。求人広告にも採用のときの説明にも試用期間中は時給850円ということは聞いていなかったのですが。




 労働契約とは、使用者と労働者との間でどのような労働をして、その対価として賃金や労働条件をどのようにするかを約束するものです。民法上では口頭での契約も認められますが、特別法である労働基準法第15条第1項で「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」と定められており、施行規則第5条で、労働条件を明示した事項を書面にて交付することになっています。使用者が労働者に対して明示しなくてはならないものは次の通りです。ただし、第4号の2から第11号までは使用者が定めをしていない場合は明示する必要はありませんが、第1号から第4号に関しては定めがない場合は「定めなし」という形で明示する必要があります。

  1    労働契約の期間に関する事項

  1の2  就業の場所及び従事すべき業務に関する事項

  2    始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて終業させる場合における就業時転換に関する事項

  3    賃金(退職手当及び第5号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項

  4    退職に関する事項

  4の2  退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当に支払の時期に関する事項

  5    臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)賞与及び第8条(注:臨時に支払われる賃金、賞与に準ずるもの)各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項

  6    労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項

  7    安全及び衛生に関する事項

  8    職業訓練に関する事項

  9    災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項

  10    表彰及び制裁に関する事項

  11    休職に関する事項

 労働契約で、試用期間を定めその間の賃金を下げることは認められますが、当然労働者の同意が必要になります。ご質問の件に関しては、労働条件をきちんと明示していないため時給900円で計算する必要があります。

 パートやアルバイトは臨時職員の性格が強く、自分のライフスタイルを重視する場合が多いので、使用者は従事する業務、労働時間、休憩時間、休日などに関する部分を変更がありえる場合は明示した上で、十分に説明をする必要があります。また、正社員の場合も同様ですが、転勤や出向を命じることができるか否かも労働条件の明示(又は就業規則)の定めが必要になります。