退職前に残りの有給休暇を使うことはできるか?

 年度末に退職する者が、使っていない有給休暇40日分を退職日の40労働日前から退職日まで取得したいと申し出ました。有給休暇を取得すること自体は異論はないのですが、ベテラン社員なので後輩に技能をしっかり引き継いでもらいたいので約2ヶ月間休まれるのは当社としても困ります。解決方法はありますか?




 法第39条第4項但し書きに「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」とありますが、この事例に限っては使用者側の時期変更件を行使することは通常できません。それは、この方の場合退職日が決まっているので、有給休暇取得予定日以前に変更する以外変更することができないからです。

 現状の解決策としては、@なるべく有給休暇を取らないようお願いする。A就業規則に、後任者への引継ぎ義務の定めがあれば、就業規則の条文を根拠に必要最低限の引継ぎをさせる。の2点くらいです。@は、あくまで会社側からの要望なので、本人の同意がなければなりません。Aは、就業規則上で定められているものなので労働者は引継ぎを行わなくてはならないのですが、引継ぎが終了すれば会社側は出勤を督促することはできません。ただし、労働者が故意又は重大な過失で引継ぎを行わないのであれば懲戒事情に該当するでしょう。

 今後の予防としては、@就業規則で引継ぎについての定めがなければ条文化しておくこと。Aなるべく有給休暇を消化してもらうため労使協定により計画的付与を行う。といったところが考えられます。

 計画的付与とは、労働者に最低5労働日の自由に使える有給休暇を残せば、労使協定により残りの有給休暇の与える時季をあらかじめ決めておくことができます。

 方式としては@事業所全体の休業による一斉付与方式、A班別の交代性付与方式、B年次有給休暇付与計画表による個人別付与方式などがあります。付与日をあらかじめ決めておく必要があり、ゴールデンウィークやお盆の時期など事業によっては閑散期に当たる所を一斉に休みにして稼動コストを削減するメリットがありますが、労使協定で決定しているので一方的に時季を変更することはできません。