就業規則を作成していますか



   就業規則を眠らせていませんか

 労働者を常時10名以上(パート・アルバイトを含む)使用する事業主は、就業規則を作成する義務があります。せっかく就業規則を作成しても、法律改正に対応させていなかったり、中には別の業種の就業規則をそのままコピーして実態に即していないようなものもあります。実態に即していない就業規則は論外ですが、法改正に対応していないとその部分は無効となり「定めなし」ということになります。

 例えば、定年年齢を満58歳と定めていても、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」で定年を定める場合は60歳以上と定められていますので、その会社の定年は無いことになってしまいます。それでは就業規則は飾りだけで役に立たないものになってしまいます。

 労働者が常時10名未満の会社は届出義務はありませんが、作成・届出はできます。助成金の申請で就業規則が必ず必要なものがありますので、将来を考え慌てて就業規則を作るより余裕を持って作成しておいたほうが会社のために もなります。

   就業規則は会社の法律です

 従業員は労働基準法をはじめ、さまざまな法律で保護されていますが、会社に対しては法律による義務と負担が中心で保護してくれる法律は皆無です。司法・行政の判断も労働者のほうが有利ということが少なくありません。会社の労務管理が明らかに違法なところも増えていることもありますが、身勝手で権利だけ主張する従業員も増加しています。

 しかし、事業主から見れば、即時解雇したくなる気持ちもわかりますが、不当解雇でより深刻な問題に発展する恐れがあります。このような場合を想定して、就業規則の中に服務規程と懲戒の項目を設けて対処していきます。就業規則は、自社を守る唯一の武器といっても過言ではありません。労使間の問題で裁判になると、会社側が法律に反する行為を行っていたり、就業規則できちんと定められていないために会社が敗訴するケースは少なくありません。就業規則さえきちんと定めておけば無用なトラブルを回避することができます。


   就業規則に定めなければならない事項は

  必ず定めなければならないもの

  @始業及び就業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交代制の場合は就業時転換に関する事項

  A賃金の決定、計算及び支払方法、賃金の締め切り及び支払の時期、昇給に関する事項

  B退職に関する事項

  規定を作る場合記載しなければならないもの

  C退職手当に関する事項

  D臨時の賃金等、最低賃金の額に関する事項

  E事業主が提供する食事、作業用品の負担に関する事項

  F安全及び衛生に関する事項

  G災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項

  H表彰及び制裁の種類及び程度に関する事項

  I労働者すべてに適用する定めをする場合、その事項


 以上が定めなければならないものと、定めた場合記載しなければならないものです。前にも触れましたが、就業規則は会社の法律で会社と従業員が守るべきものですが、見方を変えると次のようなことが言えます。


    職場の秩序・服務規律の保持

 同じ職場の従業員でも、価値観は異なります。そこで、職場でのルールが必要になります。その職場にあった規則が必要です。例えば、お茶の当番やコピー取り、上司の私用の買い物などは女性の仕事だとして男性従業員が命じることは男女雇用機会均等法の趣旨から好ましくありません。また、女性従業員に対して嫌がる行為を行う(セクシャルハラスメント)など、従業員同士でのトラブルになりやすいものは服務規程の中に盛り込み、よりよい環境で仕事ができるようにしていくことが大事ではないでしょうか。

 会社にとって秘密(例えば顧客リストや従業員の名簿など)を不正に持ち出したり利用する行為は、体外的な信用を落としかねません。金銭を着服した場合の懲戒解雇を行うことは多いですが(このケースは解雇予告手当ての除外認定を監督署からもらいやすい)、そのほかの場合は懲戒規定を設けないと解雇しにくくなります。退職金の減額や不支給なども定めがないとできません。


   就労内容を文書化することでのトラブル回避

 何らかのトラブルが発生したとき、何も文書化されていないと水掛け論になりトラブルが深刻なものになりかねません。未然にトラブルを防ぐような内容を盛り込むことが大事です。例えば、賞与や退職金の支給は、従業員にとっては大きなな関心事です。きちんと明示しないと全員が支給対象ということになってしまいます。賞与の支給対象者は、「賞与支給日に在職しているものに限る」というように文書化しておけばトラブルは減少するでしょう。


   従業員への安心感

 従業員にとって、労働条件、服務規律等が文書化されていると守らなければならない事柄が明確になるので、労働者保護になりますし、その安心感が会社への貢献につながります。労働基準法をはじめとしたさまざまな法律で会社が義務付けられている有給休暇、産前産後休業、育児・介護休業などは就業規則に書かなければならないものですが、育児・介護休業はどのようなときに休業が取得できるか記載すると判断が明確になり、不安を取り除けるのではないでしょうか。


   採用するとき有利に

 よい人材は、会社の方針や明確な目標で、組織として秩序が整った会社を選び能力を磨いていきます。就業規則の中で、労働条件や服務規律の他に経営方針や目標を掲げれば、事業主がしっかりとした考えを持った会社としてアピールできます。社長さんの気分で労働条件や方針が変わってしまう会社と、経営理念や方針を持った社長さんの会社と比べれば、従業員の貢献度や定着率の違いがはっきり出てくるでしょう。


   自己中心的な従業員への対応

 最近は、権利主張型の人間が多くなっています。今まで通用してきた大雑把な考え方・接し方では納得できなくなっています。そういう意味でも、就業規則を作成し、周知させることが必要になってきます。社会人としてのマナーに欠ける者も増えつつあります。また、転職者も増え長年培ってきた会社独自のルールを周知する必要があります。服務規律を盛り込み、会社独自の研修に生かすことも可能です。